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北本君と西村君。1

「なあ」
「うん?」
 分かれ道で夏目と別れて、西村は北本に言う。
「あいつ、いつ話してくれるんだろうな?」
「うん」
 北本は、それしか言わない。もう、何度も交わされた会話だ。
「塔子さんたちにも、話してないだろうなあ、あいつ」
「うん」
「誰か、気兼ねなく話せる相手いるのかなあ、そういうの」
「田沼だろ」
「よく多軌さんも一緒にいるけど、関係あるのかなあ」
「あるかもな」
「無口でおとなしいいい感じの人なんだけどなあ」
「夏目だってそうだろ」
「ああ、そうか」
 よくある会話。いつ話してくれるのだろう。なんで話してくれないのだろう。
 噂はずっとある。転校して来てまもなく、どこからともなく、噂が広がった。
 先生方の会話を聞きつけた生徒でもいたのだろう。親戚の間を転々として来ていて、情緒不安定で問題行動がある、と。転校時の資料にでも書いてあったのだろう。
 その後、実際の様子から『見えるらしい』という噂が広がった。
「田沼も、あまり話さないな。愛想はいいけど」
「夏目みたいだな」
「よく熱出したとか風邪ひいたとかいって休むし」
「夏目もそうだよなあ」
 西村は、噂が広まる前から、転校生に興味があって転校初日から話をしている。
 北本は、西村に会いにクラスへ行った時、西村がたまたま夏目と話をしているところだったので、話すようになった。
 その前日、まるで追われているかのように、神社の場所を聞かれていたので。
 あの時の夏目の行動・神社・そして突風。
 あれもそうだったのかもしれない、と、2人はだいぶたってから、気づいた。
 2人の分かれ道に差し掛かる。あっさり、北本が言った。
「じゃあ、また明日な」
「ああ、またな」
 夏目とも、そう言って別れた。
 明日も来る。明日も会える。夏目が何を見ていようとも。
 変わらぬ明日を、共に迎えよう。
 明日も変わらぬ、友であろう。

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