枕に頭を落とし、布団をかぶる。
手を伸ばして、薄暗い天井を見ながら目覚ましのスイッチを確認する。
窓に視線をやって、動かないカーテンを確認して。
スタンドのスイッチに触れて、部屋を闇の中に。
カーテンの隙間からこぼれる明かり。
急に聞こえてくる外界の音。
目を閉じる瞬間に、必ず掠める影。
16、7の黒髪の少年。
(ジーン・・・・・・)
眠りに入る時、必ずあなたを意識する。
忘れない。忘れられない。
人は必ず眠るから。
夢に現れるあなたを、毎日、思い出す。
目覚ましの音、カーテンからこぼれる明かり。外界の音。
眠りから覚め、支度をし、学校へ向かう。
どこかで、ふと思う。
(逢えなかった・・・・・・)
朝目覚めてすぐに。
朝食を採りながら。
ふと空を見上げた時に。
友人と挨拶を交わした拍子に。
一日のはじまりに、あなたを思い出す。
学校を終え、アルバイトへ。
お茶出し、資料整理、来客の相手。
本を書類を抱えて歩く黒い姿。
仲間達と語らい、時に笑みを見せる彼が。
(ジーンなら・・・・・・)
彼だったら、今なんて言っただろう。
彼が好きなお茶はなんだろう。
私の言葉に、どんな顔をするだろう。
扉を開けて私が来れば『いらっしゃい』と。
お茶を差し出せば『ありがとう』と。
帰る時には『また明日』と。
彼は、言ってくれるだろうか。
お給料をもらえる仕事中に、それでも私は思い出す。
あなたのことを。あなたの笑みを。あなたの死を。